設計VEの効率化例

スロープ形状変更による顧客要求の実現

機能の定義

プランを合理化する

改善の概要

スロープ形状を変更することでトラックバースを内陸側に配置し、レンタブル比も向上した。

当初案

改善案

VE提案内容

提案(1)
  • ・トラックバース:1階 内陸側、2階 内陸側
  • ・事務所:中央集約型
  • ・専有面積:約29,800㎡、施工床面積:約36,500㎡
提案(2)
  • ・トラックバース:1階 海側、2階 内陸側
  • ・事務所:東西分散配置
  • ・専有面積:29,746㎡、施工床面積:34,614㎡

VE提案内容

  • ・トラックバース:1階 内陸側、2階 内陸側
  • ・事務所:中央集約配置
  • ・専有面積:約29,800㎡、施工床面積:約34,350㎡

主要説明

着想の動機
  • ・海側からの強い風を考慮しトラックバースを1階、2階ともに内陸側に配置したいという顧客からの強い要望があったが、推奨案として提示された案①はレンタブル比が低く、コスト競争力の低いプランであった。一方、案②はレンタブル比が高いが、1階のトラックバースが海側に配置されており参考案としての提示であった。
  • ・コスト競争力のある案②をベースに、内陸側にトラックバースを変更し、さらに案①の良さを取り込むこんだ案を実現し、魅力ある提案プランで他社に対する優位性を確保することを目指した。

主要説明

主たる改善の要点
  • ・案(2)をベースに1階バースを内陸側に移動するために、建物配置を海側に移動し、さらに西側にも移動することでスロープ形状をL型に変更し、必要なスロープ長さを確保した。
  • ・スロープをL型にし、その下を潜れるようにすることで、南北に抜けるフレキシブルな車両動線を確保した。
  • ・事務所を案(1)に倣い建物中央に集約することで共用部を合理化し、さらなるレンタブル比の向上を実現した。さらに事務所を外側に出すことで整形な倉庫空間を確保するとともに、建物スパンの均一化を図った。
  • ・事務所の上部に設備を集約することで、配線配管ルートの合理化を図った。

提案の特徴

長所・短所
  • ・顧客要求の実現
  • ・高いレンタブル比による高いコスト競争力
  • ・フレキシブルな構内動線の確保
  • ・整形で保管効率の高い倉庫
  • ・均等スパンによる構造合理化
  • ・設備の合理化

提案の特徴

提案活用上の注意点
  • ・顧客要求の正確な把握
  • ・L型スロープの勾配設定

デザイン性要求の高い建物における
鉄骨架構の合理化

機能の定義

建物を支える

改善の概要

デザインコンセプトに沿う架構のグリッド化を成立させたことにより、構造躯体の合理化を実現した。

当初案

改善案

VE提案内容

  1. 建物形状の特徴である3つの円をそれぞれ中心とした放射状の架構形式
  2. ラーメン架構
  3. 部材長さ不均一
  4. 断面形状不均一

VE提案内容

  1. 建物形状に内接するXYグリッド架構形式
  2. ブレース付ラーメン架構
  3. 部材長さの統一
  4. 断面形状の統一
  5. 30°開先標準の採用
  6. 異径柱接合工法の採用
  7. 鉄骨梁横補剛工法の採用

主要説明

着想の動機
  • ・1,2階:間仕切りが少なくシームレスにつながる研修エリア
  • ・3,4階はグリッド要素が多い宿泊エリア

(当初案)は1,2階の研修エリアと3,4階の宿泊エリアにおいて、それぞれ別々に架構を構成していたため、1,2階と3,4階の柱位置が揃っていない架構計画であった。
(改善案)はグリッド要素が多い3,4階をベースに柱位置を決定し、1,2階も柱を同位置にて計画した。その際、全体のグリッド角度を建物の凹凸形状に合わせることで、グリッド化の割合を多くした。


主要説明

主たる改善の要点
  • ・(1)グリッド化と(2)耐震要素の導入により、(3)(4)の部材の統一・標準化が可能となり、構造設計における性状のコントロールができるようになった。結果、(5)~(7)の技術採用により相乗効果に至った。
  1. (1)2つのグリッド(7.5m×10.6m, 6.1m×8.65m)
  2. (2)2種類の座屈拘束ブレースの採用
    高軸力負担:FIRSTブレース
    低軸力負担・環境配慮◎:木を座屈拘束材としたブレース
  3. (3)(4)XY方向梁せいを600mmに統一
  4. (5)溶接量の削減、溶接時間の短縮
  5. (6)柱梁接合部の簡略化
  6. (7)設備自由度UP、横補剛部材の省略、鉄骨量の削減

提案の特徴

長所・短所

デザイン要所では架構の工夫を施す

  • ・柱サイズについては大小断面を設定し、曲線がデザインコンセプトの建物に対して、グリッドが強調しない空間の構成を意識している。
  • ・スパン長の設定は、架構の合理化だけでなく、建設地である奈良の歴史にも関連する白銀比(大和比)の割合1:√2とすることで、全体コンセプトに合わせている。
  • ・建物外周部の曲線は片持ち梁により架構形成をすることで、デザインを自由に決定できるようにしている。

提案の特徴

提案活用上の注意点
  • ・基本設計段階から、PM含めた建築部および鉄骨ファブとの協議を行った。特に鉄骨に関して、早期にファブが決定したことがあり、今までの物件以上に、鉄骨加工の合理化に向けての協議を川上段階から行えた。
  • ・単に、施工性をよくするための”グリッド化”ではなく、デザイン監修の建築家が考えるコンセプトに沿った”グリッド化”を提案できたことがVEのポイントとなった。