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ミャンマー ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業

幾重もの障壁を乗り越えて− 海外インフラに貢献 −

さまざまなインフラ整備など、培ってきた土木工事のノウハウで、海外にも活躍の場を広げているフジタ。
東南アジア・ミャンマーを縦断する鉄道整備改修工事にも大きく貢献した。

ミャンマーを縦断する鉄道の老朽化を改修

ミャンマーの南部に位置する最大の商業都市・ヤンゴンから北上し、第2の商業都市であるマンダレーまで全長約620km、98駅区間をつなぐ「ヤンゴン・マンダレー鉄道」。その全線複線区間の改修工事にフジタも参画した。 まさにミャンマーの主要都市をつなぐ大動脈ともいえる鉄道の大改修プロジェクト。その指揮を執るのは、海外の土木工事を中心にキャリアを積んできた森田だ。
「入札の結果、参画できると決まったのは2019年でした。このプロジェクトではじめて作業所長を拝命し、さまざまな制約の中、工事を進めていったことがとても印象的です」と森田。

全長約620kmをつなぐ「ヤンゴン・マンダレー鉄道」
プロジェクトの作業所長を務めた森田

今回、現場となるヤンゴン・マンダレー鉄道は、今から130年以上前、英国植民地時代に開業。年々老朽化が進み、設備の維持管理も十分とは言えず、その輸送能力は年々低下し、1990年以降はミャンマー国鉄によって新線、複線が建設されるものの、抜本的な解決には至らず、輸送サービスの低下などが大きな課題となっていた。
「実際、列車に乗ってみると、座席に座っていても体が飛び上がるくらいの揺れもありました。」
改修前、ヤンゴン〜マンダレー間の鉄道所要時間は約15時間。長距離バスの方が約11時間と早く、鉄道利用者も減少傾向にあった。その状況を改善すべく開始されたのが「ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業」だ。

改修前のレールには凹みも見られた
改修前のホームと駅舎
LEADS Evolution

ミャンマーの大動脈である
鉄道改修に貢献

熱帯気候、制限された作業環境も障壁に

全長約620kmのうち、整備事業のフェーズ1として約267kmの工区が設定された。そのうちフジタの参画が決まったのは、ヤンゴンから約71km北上したバゴーまでの区間。既存軌道を撤去し、新たな軌道を敷設する着工は2019年6月からスタートしたものの、その時期は熱帯気候に属するミャンマー南部では雨季にあたる。
「5月から10月にかけての雨季は、土工事などを行うと支障も出やすく、避けなければいけません。着工時は、まず関係者用の事務所の建設を行い、線路となるレール、列車の進む方向を切り替えるための分岐器などの調達を進めました」と森田は当時を振り返る。

フジタが参画したバゴー〜ヤンゴン間

そして乾季を迎えた10月からは線路の仮設工事を開始。バゴーを起点に、ヤンゴンへ南下するかたちで進めていく。それにあたりまず求められたのが、作業体制の確立である。
多い時では200名規模の現場作業員が稼働。土工事やコンクリート工事などは作業も覚えやすく進行は比較的スムーズだが、レールの溶接や設置、分岐器の設置など軌道の安全性や列車の乗り心地に直接影響する部分の作業には精度の高さが求められ、入念な指導を行いながら取り組んだ。
「現場を統括するポジションの人たちは工事内容をよく理解してくれていても、幅広い作業員にまでノウハウを浸透させるのは難しく、繰り返し丁寧に指導するしかない状況でした。作業チームを複数に分け、特に成果の良かったチームを朝礼で発表し、モチベーションを上げてもらうといったやり方も取り入れながら、1ミリでも作業を前に進めることを念頭に置きました」と森田は語る。

平野部を縦断する、ヤンゴン・マンダレー鉄道。工事現場となる軌道の周囲は田畑が多く、現場へアクセスできる道も不十分なため、まずはそのルートの確保を行った。そして軌道に着けば、当然ながら列車は運行中。工事を進めるにもさまざまな制約が立ちはだかる。
「上り線と下り線とがあって、それを片方ずつアップグレードしていくしか方法がありませんでした。上り線を工事する時は上り線をクローズして、列車は下り線のみの交互運行にして。上り線が終わったら今度は下り線をクローズして工事を進めました。線路工事だけでなく橋梁の工事も同様に、上りと下りを半分ずつ行っていくのです」
上り線と下り線の軌道間隔は、約2.4m。列車の運行速度は遅いとはいえ、万が一作業員が接触してしまえば重大事故につながってしまう。安全管理に徹底しながら工事は進められた。

周辺は田畑が多く現場へのアクセス道路も不十分
上り線、下り線それぞれ片方ずつ工事を進める
橋梁工事の様子

コロナ禍や政変も乗り越え約5年半で竣工

1年の約半分が雨季という気候、列車が運行する中での軌道改修という条件を抱えながら、区間に約50ヶ所ある橋梁の工事にも着手。橋脚の足元を支える杭基礎を設けるために地盤から地下へ約40mの掘削を行う極めて困難な工事や、橋を支える基礎に箱型のコンクリート構造物(ボックスカルバート)を設置して水路を確保するなど、将来的な安全性を見据えた改修が進められた。

ボックスカルバートを設置して水路を確保

さらに2020年初頭、世界を揺るがすほど不測の事態が発生する。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延である。ただでさえスムーズな進行が難しい中、さらなる障壁に見舞われてしまう。
「日本も同様だったと思いますが、行動制限も強いられましたし、感染者と少し接触しただけでも噂になったり。作業環境だけでなく、周りの雰囲気もこれまでとは変わってしまいました」と森田は当時の状況を語る。
実際、工事管理や作業員の宿舎を伴う事務所では、陽性になるメンバーもいて、その都度、事務所を2週間閉鎖。作業を進めるにも人員の確保が難しいという状況に陥った。
「我々の工区内には2つの事務所がありましたが、距離が数十キロ離れていて。鉄道工事ではよく起こりがちなのですが、エリアが広い分、事務所間で人員調整するにも距離が離れていて大掛かりな動きになってしまいます。今回は乾季と雨季でも必要な作業人数が大きく変わりましたから、それも含めて作業環境づくりにはかなりの神経を使いました」

また2021年には、新型コロナウイルスの変異株であるデルタ株が流行。重症化する感染者が増えるという世界的な傾向と同様に、プロジェクトメンバーの中でも罹患者が発生。医療機関も十分とは言えない生活環境の中、工事を進める傍らで患者へのケアも行うといった日々が続く。
さらに追い打ちをかけるように、2021年2月にはミャンマー国軍によるクーデターが発生し、ますます行動が制限されるとともに、治安も悪化して工事関係者の身の安全が脅かされる事態に陥った。

作業条件だけでなく、未曾有のウイルス蔓延やクーデターに伴う情勢不安など、多くの困難が続く中での進行であったが、2024年11月28日、約5年半の歳月をかけ、ヤンゴン〜バゴー間の約71kmにおける軌道整備が竣工を迎えた。大きな貢献を果たしたにも関わらず、プロジェクトを遂行して森田が感じたのは達成感よりも安堵だったと語る。
「竣工後に列車に乗った時、何物にも代えがたいような心地良さを感じるんだろうな、と思っていましたが、それよりも『作業員の怪我が出なくて良かった』『これで皆、次の現場へ送り出せる』といった安心感が大きかったですね」

完成したトウチャンガレイ駅
LEADS Evolution

日本からの品質高い設備を
海外インフラに導入

ミャンマー現地に貢献、そして名誉ある受賞も

今回のプロジェクトにおいて、特にポイントとなったのが、線路のレールに、日本の各鉄道でも多く使われている「JIS 50N レール」を導入した点である。
「その名の通り、1mあたりの重量が50kgのレールです。改修前は1mあたり37.5kgのレールが使われていましたが、それに比べて断面も大きく、安定した運行につながる整備が実現できたと感じています」

ミャンマー国内を縦断する大動脈である鉄道において、高速走行化に貢献できたことで現地の利用者から喜びの声を聞くこともできた。今回の実績はフジタ社内でも「2024 事業年度 社長表彰準大賞」を受賞。さらに社外においても表彰の場に恵まれる。(一社)海外建設協会および(一社)日本建設業連合会の正会員が携わった海外建設プロジェクトの中から優秀なものが表彰される“海建協表彰2025「OCAJIプロジェクト賞」”を受賞したのだ。

日本でも多く使われているレールを導入
海外協表彰2025「OCAJIプロジェクト賞」受賞
国際本部 部長 中野、国際事業部 部長 高橋、国際本部長 君島、同副本部長 角
(所属・役職はプロジェクト当時のものです)

「今回のプロジェクトでは経営陣の方々、そして施工がはじまってからもさまざまな困難の中、最後まで諦めず作業をやり遂げてくれたメンバーの尽力がありました。今回こういった受賞ができたのも、本当に皆さんのお力があってこそ。ミャンマーの大都市をつなぐ鉄道改修に携わり、現地の暮らしに貢献できたことが特にうれしいですね」
これまでもマレーシアやUAEにおけるプロジェクトに携わってきた森田だが、そのほとんどが鉄道関連の整備工事だ。
「これまで複数の国の事業を経験してきましたが、また別の事業でも顔を合わせる方が多く、人との縁は大切にしたいと思いますね。また次の、海外プロジェクトに活躍の場を広げていくことで私、そしてフジタの実績を一層厚いものにしていければと思っています」

Voice

人との縁を大切にしながら、
活躍の場を広げていく。

プロジェクト作業所長森田