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ダイバーシティ(女性活躍推進)

女性にもっと
活躍の場を
− 職種や年代を横断した交流 −

2007年、社内に女性総合職ネットワーク「F-net」を立ち上げるなど、女性の活躍を積極的に推進するフジタ。
それから10年以上を経た現在、社内に訪れた変化とは。

男性社会という
イメージを
変えていくために

男性社会というイメージが強い総合建設業。その中でフジタは2007年、女性総合職ネットワーク「F-net」を社内に立ち上げた。当時、社外取締役を務めていた女性が「もっと女性が活躍しやすい会社へ」と声を上げたことが、この発足につながった。人財は重要な経営資源という考えのもと「ダイバーシティがフジタを強くする」という方針に基づき、スタートしたF-net。その名前の「F」にはFemale(女性)とFujita(フジタ)を掛け合わせた意味を持ち、全社的に取り組んでいくという思いが込められている。

職種や年代を越えた女性同士の交流

F-net発足当時、メンバーとなった女性総合職は48名。社員全体の2%にしかすぎない規模だったが、それでもメンバーは皆、日常業務と並行しながら「女性が働きやすいために何をすればいいか」アイデアを出し合った。現場で働く女性向け作業服の開発など、職場環境の改善に取り組むだけでなく、出産などのライフイベントに合わせた働き方シミュレーションの作成やワークライフバランスの取り組み提案など、企業風土の改善にも積極的に取り組んでいった。
少数精鋭とはいえ、職種、年代といった垣根を越えて交流できるネットワークは、女性総合職にとっても大きな存在となり、その規模も月日とともに拡大していった。F-net発足10年目を迎えた2017年には、メンバーは262名、社員全体の9.6%にまで増加。メンバー同士で日頃の悩みや不安などを話し合い、解決へのアクションプランを打ち出す意見交換会なども積極的に行われ、さらには在宅勤務、サテライトオフィスなど多様な働き方を促す制度も充実していった。そういった取り組みが功を奏し、女性総合職のキャリアアップも実現。管理職に就く女性が年々増加する、という流れが生み出された。

2019年度は「F-net10周年総会」を開催
LEADS Relief

女性総合職の絆を深める
全社的な取り組み

ライフイベントを
乗り越えた経験を
社内に発信

次々と誕生する女性管理職とともに、土木系で初の女性作業所長に就いたのが、九州支店に在籍する有吉だ。2023年10月から小倉構内不要線路解体撤去工事作業所長を務めている有吉は、もともと東京生まれの東京育ち。2002年の入社以来、首都圏の高速道路工事などで施工管理として関東の現場で活躍してきた。入社5年目となる2007年に九州支店へ異動し、そして結婚。さらにその6年後となる2013年には長男を出産し、翌々年には長女を出産。2人の育児と並行しながら着実にキャリアを積んできた。

もともと体を動かすことが好きで、施工管理として現場で働きたいという想いを叶えた有吉。九州支店に異動後は女性総合職が自分だけ、という環境の中で責任の大きな仕事に挑んできた。「今でも特に印象に残っているのが、地下をシールドトンネルで掘削しながら行う工事だったのですが、さまざまなリスクも想定された緊張感漂う現場の中、当時20代の私が現場代理人に抜擢されたのです」と語る。自分よりも遥かにベテランの男性管理職が揃う会議にも定期的に参加し、その役割を全うした。「慣れるまではやはり大変でしたが、無事に作業を終えた時は、大きな自信を得ることができました」

2011年シールド作業所にて

妊娠したら仕事は内勤になる、という漠然としたイメージを持っていたが、長男の妊娠を会社に告げた時、当時の上司からは「せっかく現場を長く経験してきたのだから、自分のやりたい方を選んでいい」と意外な言葉が返ってきた。幸い妊娠中も体調は良好だったことから、自ら現場の仕事を選んだという。「それも周囲のサポートに恵まれていたおかげだと思います。高所作業などは他の方が率先して行ってくれるなど、いろいろと配慮してもらいました」と有吉は振り返る。
長男、長女の出産が続いたが、現場に出たいという一心で仕事と向き合ってきた。「配偶者が平日休みの仕事で、私が土日休みだったため、家事や育児の分担をきちんとできていたことが、仕事を続けられている大きな要因だと思います」。そうした中でキャリアを積み、作業所長にも就くことができた。F-netには発足当初から参加していた有吉は、ネットワーク内のコミュニティサイトで自身の経験を発信した経緯について「現場の仕事を、子供を授かった後でも長く続けたいという社員の方がいれば、何かの参考になるかも知れないと思ったことがきっかけです」と話した。

土木系初・女性作業所長に就いた有吉
協力的な家族の存在が大きな支え

そんな有吉の言葉をF-netのコミュニティサイトで受け取り、勇気づけられたと語ってくれたのは、フジタで女性初の営業所長に就いた富士本だ。宮崎県で生まれ育ち、大分県の大学に進学し、建築を学んだ。施工管理の仕事に興味を持ち、2007年にフジタに入社。その後は東京に配属となり、キャリアを積んできた。そして入社8年目の2014年に結婚、翌年には長男を出産。当時は特別養護老人ホームの建築に携わった。「それも有吉さんという存在があったから、やり遂げることができました」と富士本は当時を振り返る。

産休・育休明けに職場復帰した富士本は、音楽ホール建設の仕事を担当。このような地域貢献につながる施設に携わることが、入社前からの願望だったことから、現場監督として意気込むものの、作業は難航した。「複雑な構造の大空間を創り上げるために、いろんな職種の方々が動いている中、私は育児中のため残業もできない。志半ばで帰路に就く日が続き、この現場の一員でいていいのか、悩むこともありました」。さらに業務中に長男の保育園から呼び出しがかかり、周囲に作業を託すこともあった。その中でもホールが無事に竣工を迎えることができた時は、大きな達成感を感じたという。

2020年建築作業所にて

仕事と育児を両立する難しさに直面しながらも、プロジェクトは完成し、自分自身のキャリアも上がっていく。その経験から「現場を遂行することができたのも、もちろん周囲がサポートしてくれるからですが、それを重く受け止め過ぎないことも大切だと思いました。至らない点があっても、最大限努力をし続けることで、自信を失わずに乗り越えることができた気がしています」と話す。
2021年から富士本は、出身地である九州の支店に異動。工場の建築に携わってきた。現場の仕事でさらにキャリアアップしたいと1級建築士の資格も取得。そんな中、延岡営業所の所長という辞令が出た。「営業の経験もなく、ただただ驚くばかりでしたが、かつての上司からの『はじめてのことでも、まずはやってみることが大事。それから先のことを考えればいい』という言葉を思い出し、挑戦することにしました」。現場での困難を乗り越えてきたことが糧となり、何事にも前向きに挑戦できる姿勢が身についたという。休日には、子供が参加しているソフトボールの練習や試合に出掛けることを楽しみながら、次への活力につなげている。

女性初・営業所長に就いた富士本
休日は家族との時間でリフレッシュ

独自の取り組みが
社外でも
大きな評価へ

2024年現在、F-netのメンバーは450名を超え、そこから女性管理職も20名以上誕生した。F-netが発足した2007年に入社し、その当時から活動に携わってきた富士本にとっても、部署や拠点を横断して、社内の女性同士で交流できるこのネットワークが大きな支えとなっている。「自分の立場が変わるたび、どうすればいいか相談できる相手がいた、ということは大きいですね。最近では自分自身の経験を、ロールモデルとして発信する機会も増えているので、そういった部分で社内に貢献していけたらと思っています」

F-netの取り組みは社外でも評価を受け、女性の活躍推進に取り組む企業や個人に贈られる「東京都女性活躍推進大賞」においてフジタは優秀賞を受賞した。また、東京国際フォーラムで開催された「ライフ・ワーク・バランスEXPO東京 2024」においても、先進企業の取り組み事例として紹介されるなど、ダイバーシティ推進に積極的な企業として認知されてきている。

令和4年度「東京都女性活躍推進大賞」にて優秀賞

有吉は「技術開発でも、企業の取り組みでも、他社ではあまりやっていないような新しいことに挑戦する、という社風がフジタにはあります。F-netがここまで成長できたのも、このような取り組みに理解のある社員に恵まれているからだと思います」と語る。現場の仕事が好きで、管理職というポジションには関心が薄かったという有吉だが、作業所長に就いた今では、定期的に外部セミナーを受けるなど、さらなるキャリア形成へと真剣に向き合っている。
本社で大型プロジェクト室に配属されていた時には、ダイバーシティ推進部の取り組みにも参加していたという富士本は当時に比べ、社内でも活躍する女性の姿が増えたと実感する。「建築でも土木でも、現場で働く女性も特別視されなくなってきていますし、産休・育休を経て現場に復職したという声も聞くようになっています」。現在は故郷の宮崎県で営業活動に打ち込み、これまで現場で培ってきた経験も生かしながら、地元の発展に貢献していきたい、と抱負を語る。

今後もF-netの活動に力を入れる

F-netの活動は10年目を節目に一度落ち着いたものの、ここ数年で、ランチコミュニケーションの場を設けるなど定期的な活動が再び増えてきた。この動向について有吉は「活動が積極的になったということは、自分の立場に悩みを抱える人がまだまだ多い状況だと私は感じています。だからこそ、一人ひとりの不安を払拭するための活動には力を入れていくべきだと感じています」と強調、その上で「最終的には女性活躍推進とか、ダイバーシティ推進とかいう言葉を敢えて出さなくても、平等な働き方が自然とできている環境が実現するといいと思っています」と思いを語る。

Voice

実現すべきは、
平等な働き方が
自然とできている環境。

小倉構内不要線路解体
撤去工事作業所長
有吉

Voice

自分自身の経験を
発信していくことで
会社に貢献していきたい。

延岡営業所長富士本

ダイバーシティ 女性活躍推進