近年、局地的な豪雨の発生頻度増加や都市化の進展ともなう雨水流出量の増加によって、浸水・氾濫の危険性や被害リスクが増大しています。そのような災害を最小限に抑えるため、フジタが携わった「災害に強いまちづくり」の事例を紹介します。

提供 広島市下水道局
広島市は、市域の南北を貫く太田川河口部に形成されたデルタ地帯に位置する中国地方最大の都市です。中でも都市機能が集積するJR広島駅周辺地域(大州排水区)の浸水対策事業として行われたのが大州(おおず)地区雨水貯留池築造工事です。大雨が降った際の浸水被害を防ぐため、広島東洋カープの本拠地・Mazda Zoom-Zoom スタジアム広島(マツダスタジアム)のグラウンド地下に大容量の雨水貯留池を建設しました。
都市空間の利用による土地の有効活用
雨水貯留池の設置には一定の広さの土地が必要となりますが、大州雨水貯留池は球場の下に建設することにより土地をより有効に活用しています。また、マツダスタジアムは浸水時緊急退避施設に指定されており、物資の備蓄倉庫や災害時のマンホールトイレなどの設備も整備されています。雨水貯水池では、広島市下水道局による施設見学会が開かれており地域の皆さまの認知度も高く保たれています。
雨水の再利用とまちの浸水対策
貯留量は15,000㎥。そのうち1,000㎥は、ろ過したのちグラウンドへの散水やトイレ用水、周辺のせせらぎ水路にて再利用しています。
大州雨水貯留池は、降雨時に既設下水道管の能力を超えた雨水を一時的に溜めることで、既存能力の約2.5倍の量の降雨にも対応できる施設です。2009年に完成して以来、10年間で26回の水の流入があり(そのうち4回は満水)、減災に貢献しました。(2019年現在)
工期短縮の施工技術
プロ野球シーズン開幕に合わせて新球場をオープンするため、限られた期間での施工が求められていました。これを解決するため、土木構造物では珍しい「現場打ち同等型プレキャスト鉄筋コンクリート構造」を採用しました。貯留池内部の主要部材(柱・梁)と床版型枠にプレキャスト鉄筋コンクリート部材を活用し、それらを現地で組み立てるとともに、雨水貯留池外周部(底版・側壁・床版)を現場打鉄筋コンクリートで巻き立てて構造物を一体化する工夫を行い、工期の短縮だけでなく雨水貯留池の躯体連続性・水密性の確保を実現しました。また、プレキャスト部材が支えになることで支保工が不要となり、結果として時間・人員・モノの削減につながりました。