環境 - TCFD/TNFDに基づく情報開示
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示
TCFDとは
企業が気候変動に関連する財務情報を開示するための国際的な枠組み。2015年にG20の要請で金融安定理事会が設立した組織で、企業の気候変動リスクと機会を評価し、透明性のある情報開示を促進することを目的としている。
当社では、気候変動に起因する課題を、短期・中期・長期にわたって事業活動やサプライチェーン全体に影響を与える総合的な重要課題としてとらえています。
不確実性の高い気候課題や社会情勢の下でも、事業を継続し企業価値を向上し続けていくために、当社ではシナリオ分析を行い、リスク低減と機会創出の対応策を講じています。重要課題は、国内外の動向、社会やステークホルダーからの要請等を踏まえ、定期的に見直し、レジリエンス向上に努めています。
2024年1月にTCFD提言への賛同を表明し、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」のフレームワークに沿った環境課題への対応をご報告いたします。
ガバナンス/リスク管理
環境および社会課題への対応方針や重要事項等を協議・審査する組織として、社長を委員長とし、取締役および執行役員、各本部長で構成する「サステナビリティ委員会」、その傘下に各部門の環境責任者で構成する「環境推進員会」を設置しています。環境に関する目標の設定、対応施策は、「環境推進委員会」で協議し、年3回程度実施される「環境推進会議」で環境目標の進捗状況を確認しています。重要な課題は「サステナビリティ委員会」へ報告し、審議・承認・決定しています。
気候関連リスクと機会、重要課題の特定プロセス
当社は、気候変動や自然環境の変化が事業に及ぼすリスクを最小化し機会を最大化するために、シナリオ分析を実施しています。国内外の動向、政策・法規制の動き、国際評価機関の要請事項などを考慮し、リスクと機会を抽出しています。抽出したリスクと機会は、関連部署で評価、分析し、特定した重要課題を含め対応策を検討します。その結果を環境推進委員会に報告、協議を行い、社長を委員長とするサステナビリティ委員会で審議の上、目標・方針・戦略に反映させています。
気候変動に関するガバナンス体制図

気候関連リスクと機会、重要課題の特定プロセス

戦略
短中長期の気候関連リスクと機会が事業活動およびサプライチェーン全体にもたらす影響を抽出・評価するために、シナリオ分析を実施しました。リスク・機会への対応策を踏まえ、重要課題(マテリアリティ)を特定し、社内の承認プロセスを経て、方針・戦略・目標・施策等に反映させています。
フジタのシナリオ分析の手法と結果、更新プロセス
2020~2021年度に実施したシナリオ分析では、気候変動および事業活動に影響を及ぼす変化を踏まえ、TCFD要件に適合する「シナリオ分析プロセス」を社内で開発し、自社固有のシナリオ分析を実施しました。脱炭素社会に向けた政策や規制の強化、革新的技術開発、社会システムの改革・変化を伴う「移行」シナリオ(1.5℃シナリオ/気候変動による緩和)と、地球温暖化による急性的・慢性的変化が加速する物理的シナリオ(4℃シナリオ)に加え、建設業界全体および当社の事業に影響を及ぼす国際社会・経済状況についての公的予測や条約・宣言等をシナリオとして追加しました。シナリオは、国際エネルギー機関(IEA)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)等を参照しました。
シナリオ分析をとおして抽出した309の重要課題を「脱炭素」「災害・防災」「自然資本」「労働・健康」の4つの分野に集約し、外部レビューを受け妥当性を確認しました。重要課題は経営層と共有し、中期経営計画重点方針、環境目標、技術開発戦略、年度部門計画等に反映するとともにマネジメントシステムへの連動を行っています。リスクと機会、重要課題は、国内外の報告書、政策・規制等の外部動向やマネジメントレビューによる課題等を踏まえて、毎年見直し/更新を行い、2025年度は5件の追加、11件の更新を入れた42課題を各部門目標設定にあたっての検討事項として通達しました。
〈シナリオ分析上の前提条件〉
時間軸:短期(0~1年未満)、中期(1年~5年未満)、長期(5年以上)
対象期間:2020年~2050年、~2100年
対象範囲:フジタグループ全事業
リスクと機会・対応策(概要)

※時間軸:短期(1年未満)、中期(1年以上5年未満)、長期(5年以上)
指標と目標
気候関連の指標として、大和ハウスグループ共通の環境長期ビジョン“Challenge ZERO 2055”のもと、2050年カーボンニュートラルの達成に向けたCO2排出量削減目標を設定し、事業活動(スコープ1、2)に加え、当社のCO2排出量の大部分を占めるスコープ3(カテゴリー11)の削減に取り組んでいます。 中期目標である2030年までにサプライチェーン全体でCO2排出量40%削減(2015 年比)の達成に向け、5ヵ年ごとの環境行動計画「EGP(エンドレス グリーン プログラム)」で設定している排出量削減目標の進捗管理を行っています。
CO2 削減量実績・目標

*2022年度より、スコープ2の算定方法をマーケット基準に見直しています。(基準年から2021年度まではロケーション基準で算定)
TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示
TNFDとは
TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)は、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の自然版。民間企業や金融機関が、自然関連の課題を特定・評価・管理し、開示するためのリスク管理および情報開示の枠組み。
建設事業は、事業活動を行う上で木材や鉄、水といった多くの自然資源を利用するとともに、工事の過程で水・大気・土壌の汚染等の影響が伴うため、生態系への配慮が常に求められる事業です。
そのため、当社は自社の事業活動を通じて自然環境に負の影響を及ぼすリスクを正確に把握し、回避低減することが、我々の社会的責任だと考えています。
2024年度実施概要
TNFD開示における「スコーピング」は、自然との関わりを段階的に評価するLEAPアプローチの起点となる重要な工程であり、分析の対象となる重点事業を特定する作業となります。
当社は2024年度、TNFDが推奨するENCOREを用いてスコーピングを実施しました。自然資本との関係性を評価・分析した結果、建築・土木・開発・再エネの4事業を重要度の高い事業として選定しました。選定にあたっては、ENCOREの分析結果だけでなく、事業規模や自然との関わりの直接性など、自社の特性も考慮した上で、事業ごとにサプライチェーンの上流から下流まで、自然資本への依存・影響を整理しました。

2024年度実施結果
分析の結果、当社の事業活動においては、サプライチェーン上流と直接操業のフェーズで自然資本への依存・影響が大きいことを確認しました。
サプライチェーン上流で特定(抽出)した木材調達に関しては、森林破壊ゼロ方針のもと、「生物多様性ガイドライン【木材調達編】」に定められた管理指標に基づき、サプライヤーと協働した活動を推進しています。
一方で、直接操業である建設工事現場の自然関連リスクの把握については、限定的であるという課題が明らかになりました。今後は、このギャップを解消するため、生物多様性上重要なエリアに近接する作業所を順次特定し、管理体制の強化を進めてまいります。
スコーピングによる分析
