図面の線一本一本に責任を感じながら
関係者と共に喜べる建物づくりを目指す
意匠設計上田 桃子
意匠設計担当者は、建物のデザインだけを考えているわけではありません。施主の要望をくみ取りつつ、建物の使い勝手や法的制約、施工性などもふまえたデザインを仕上げていくのはあくまで業務の一部。構造設計や設備設計、積算、工事、技術など、社内のさまざまな部署の意見を取りまとめ、それらを包括したデザインにしていくことこそ、仕事の本質です。社外に目を転じれば、施主はもちろん、設計事務所や行政などとの調整も日常的に行います。それぞれの立場から出てくる意見や要望をまとめるのは難しいことですが、私なりに重視していることがあります。それは、相手が一番大切にしているものが何かを探ることです。例えば、提案したデザインに対して「もう少しスタイリッシュな感じがいい」といわれたのなら、なぜそう感じたのかを相手とのコミュニケーションの中で追求します。外壁タイルの色か質感か、手すりの形状か。意見の根本を理解し、そこを押さえれば、他の要望は交渉に応じてくれるかもしれません。このように関係者の考えを整理しながら、実現可能な方向へ進めていくのが私の仕事です。
入社1年目の時に小規模集合住宅を担当し、建物の大きさを決めるボリューム検討から設計、工事監理まで、一連の流れを経験することができました。そのため、建物が完成したときのことは今でもはっきり覚えています。そこには、建築を学んでいた学生時代には味わうことのなかった、自分の描いたものが実際に形になるという大きな感動がありました。しかし、それと同時に恐れを感じるようになったのも事実です。図面に描いた線の一本一本が質感を伴った“現実”となったことで、責任の重さを改めて実感させられたのです。それからは、線一本であっても、そこにある理由をしっかり考え、説明できるようにという気持ちが一層強くなりました。この気持ちを忘れることなく、自分らしい意匠設計ができるよう力をつけていきたいです。また、現在フジタは設計や施工にBIM(*1)を導入したり、環境ニーズに応えるためのZEB(*2)提案を強化したりと、新しい取り組みにも積極的です。こういった知識も取り入れながら成長していけるのも、この仕事の醍醐味の一つです。
(*1)BIM:Building Information Modelingの略。コンピューター上で建築物の3Dモデルを再現し、各職種・各作業者がリアルタイムでデータを入力し、情報共有できるシステム
(*2)ZEB :Net Zero Energy Buildingの略。快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のこと
上田 桃子
所属部署:設計統括部 計画設計第三部
2018年入社/環境科学研究科環境計画学専攻修了
映画が好きで、仕事終わりにレイトショーを見るのが楽しみ。好きなジャンルは、SFのタイムトラベルもの。最近は趣味で、ラグマットやステッカーを図案から考えてつくったりもしている。
※掲載情報は取材当時のものです