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ものづくりは人づくり
2006.12.18
ものづくりは人づくり
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【企業城下町】 |
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197万平方km(日本の5倍強)を有するメキシコ合衆国(以下メキシコ)の、背骨を成す中央高原地帯。その北西部の交通要衝に位置するアグアスカリエンテス(スペイン語で熱い水の意味で、温泉が沸くことがその地名の由来)市は標高1,870mに位置し、16世紀からメキシコ有数の銀鉱山の街サカテカスとメキシコシティを結ぶ"銀の道"の宿場町として栄えてきた。現在では歴史的な街並みも多く残っている、人口65万人超の一大工業都市だ。 1980年代に日産自動車が本格的海外生産拠点(現在、年産30万台弱を生産)の一つとして進出したこともあり、当社の得意先である日系企業のサプライヤー各社が1990年台から続々と工場を新設した。現在では10数社が操業しており、雇用を含め地元経済に大きく寄与している。 |
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青い空の下の作業所
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【CVT製造の一大拠点を設計施工】 |
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| 鉄骨建方施工中 |
本年4月に本格着工した『ジヤトコメキシコ アグアスカリエンテス工場増築工事第2期工事』は、ラテンアメリカ(以下ラテン)では、当社初の本格的な大規模工場建設である。 ジヤトコメキシコ社は、日産メヒカーナ(日産自動車の海外子会社)の約180haの広大な工場の一角で、2003年からCVT(無段変速機)を生産しているが、新工場が操業する2年後にはCVT年産80万基の一大製造拠点になる。日本が誇る環境にやさしい高品質技術ということで、日系自動車メーカーのみならず米国ビッグスリー相手の売り上げ増で工場増設が決定した。 当社は日産自動車およびジヤトコ両社の工場など、各施設での豊富な実績とそれに基づく人脈を活かし営業展開すると同時に、昨年9月からの建設業者選定に当たっては、当社に根付いているVE(バリューエンジニアリング)等による検討により、ランニングコストを重視した上で建設工事費の減も図る提案により、鉄骨造1階建て、延床面積32,485㎡の工事を設計施工で受注した。 |
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【ラテンでの大型工事】 |
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実施設計も後半にさしかかった今年2月から当地に乗り込んできたのが施工担当の佐土平所長。全社を挙げて取り組んでいる重要得意先からの仕事の最前線に位置するキーパーソンだ。 首都圏作業所での豊富な実績をベースに、約10年前に海外工事に携わって以来、マレーシア、韓国、フィリピン、中国などで日系メーカーの工場や在外公館建設工事などで指揮をとってきた。 その所長から見た本工事は、「工場建設自体の技術的な難易度は平均クラスかもしれない。しかし、2年ほど前にメキシコに進出した我が社には、現地スタッフや建設ノウハウの蓄積もまだまだ少ない。ラテンでの初めての大規模工場の建設工事に携わる苦労を、当初はしみじみと感じたものだ」と着工当初を振り返る。「また、稼動している工場内での工事であると同時に、既存工場の改修工事も本工事に含まれており、安全対策には日本国内の通常工事の2倍も3倍も気を使う。工事監理も発注者である海外子会社に加え、日本国内の親会社の監理も受けており、日本並みの品質、工程管理、安全管理が要求される」とその日焼けした顔を引き締めながら続ける。 |
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【基本に忠実に】 |
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佐土平所長(左)と現地の協力会社の方 |
そういった中、佐土平所長が一番に留意してきているのが「基本技術の繰り返し」、「挨拶など基本所作の徹底」だ。基本技術を反復、徹底する事で、ともすればおざなりになりがちな品質管理、工程管理、安全管理のレベルアップを図っている。いわゆるラテン気質のメキシコ人相手に根気よく、我慢強く、そして笑顔を持って毎日接しているとのこと。 「物事に対し忠実でない」。これが所長のメキシコ人への印象だ。「これまで海外赴任してきた中で、マレーシアでは建築にBS(英国)スタンダードがあり、韓国、フィリピンではASTM(米国建設基準)がある。中国でも法律が有り、職人はそれに則り作業を進めている」。「ところが、メキシコでは法律、規格はあるが、その順守姿勢にルーズな印象がある。性格的に自分勝手で、協調性がない」と辛口の言葉が続く。 |
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スタッフと打合せる西竹(右) |
一方、「特にNAFTA加盟後、メキシコ人のビジネスに対する姿勢はアメリカナイズされ、勤勉になってきた。また、手先も器用なところもある」、「日本人に対し親切だ」、「ラテンののりで非常に友好的だ」という日系企業のトップの意見に対しては同感とのこと。 短期間でそれらの相反する性格を見抜いた所長は、協力業者へ次のようなことを繰り返して作業所運営をしている。
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1. |
全工種毎に計画書を作成する。そして、それを徹底することで工事の目的、趣旨を伝え、一定の品質を確保する。そこまでやらないと、協力業者の各現場担当者が"勝手に設計施工"(例えば、水勾配を1%必要なところで0.5%しかとらない)し、悪いほうのものづくりをするからだ。 |
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2. |
日本と同様に朝礼を毎日行い、安全意識向上と合わせ作業工程厳守への周知徹底を図る。 |
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3. |
その朝礼時、各作業長が全員の前でその日の作業内容と重点安全事項を発表する。 | |
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| 日本ではおなじみのラジオ体操 |
朝礼で安全指示を行う寺岡 |
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4. |
朝礼後、職種毎にフジタ作業所スタッフと職長、作業員がツールボックスミーティングを行い、「KYボード」を用いて作業内容の確認とKY(危険予知)を行っている。各協力業者の職長クラスを中心にフジタ作業所スタッフと、安全と工程に関する月例打合せで意思疎通を図っている。また、打合せ後夕方からのコミュニケーションでは所長自らテキーラ(メキシコで有名な蒸留酒)のボトルを皆に振舞うそうだ。 |
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「今日も一日、安全作業で頑張ろう!」 (スペイン語です) |
作業長が作業内容を説明 |
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【施工計画の重要性】 |
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工事の性格上、重複した繰り返し作業が多い。そういう中で鉄骨工事、土間打設工事などでは工区分け、平面区割りの施工をすることで作業効率を高めている。その効率化のベースになっているのが、前述の施工計画であり、朝礼に象徴される基本動作の繰り返しの徹底だ。 一般的にメキシコ製品は前工程が悪く、品質に難があるため、鋼製建具や、空調などの設備機器は米国から輸入しているものが多い。それらの輸入スケジュールも工期厳守の必須条件であり、施工計画にしっかり織り込まれている。さらに作業所としては、マスター工程を生かしながら、一部の外構やユーティリティ工事などを早期に手がけ、全体工程の圧縮を図っている。 本格的に始まる設備工事や内装工事でもそれらの施工計画、VE活動は「PDCA」(PLAN-DO-CHECK-ACT)の活用徹底と合わせて、品質確保、工程管理、安全管理に大いに威力を発揮するだろうと感じた。
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【ものづくりは人づくり】 |
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最後に、所長に海外での工事をスムーズに運営する秘訣は何かと尋ねてみた。 返ってきた言葉が「ものづくりは人づくり」、「現地の協力業者もそう。フジタの現地スタッフもそう」、「なれない海外でうまく運営するのは人づくり。後は自然についてくる」だ。当社の職員3名――西竹、寺岡、高城もうなずく。西竹、寺岡にとっては本作業所が初めての海外勤務だ。 「佐土所長のローカルスタッフの使い方はうまい」、「厳しく、優しく、末端の職人さんにきめ細かく接している」、「ぼくらも所長を見習い、人使いの達人になりたい」などと口を揃える。 「ものづくりは人づくり」。色々な部分で困難の多い海外で成功する秘訣がそこにありそうだ。 |
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紺碧の空 (カーブミラーに映った作業所全景)
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【あとがき】 |
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取材を終え作業所を再度見学した。建方中の鉄骨越しに、青い空と白く大きな雲を見て、スペインの文学者アソリン(Azorin)の一文を思い出した。
「雲は『測り知れぬ未来の写し絵』としてわれわれの前に表れて来る」 Las nubes se nos representan como un "traslado del insondable porvenir". |
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(2006年9月 記) |